相続した実家・空き家をどうする?空き家対策特措法の強化と放置リスク

はじめに

「親が亡くなって実家を相続したけれど、どうすればいいか分からない」

「とりあえず誰も住んでいないけれど、そのまま持っておいていいだろうか」

このようなご相談は、近年急増しています。少子高齢化が進む日本では、親世代が築いた住まいをそのまま引き継ぐケースが増え、空き家の数は社会問題として顕在化しています。

総務省の住宅・土地統計調査によると、2023年時点で全国の空き家数は約900万戸に達し、住宅総数の約13.8%を占めています。

そして2024年・2026年と立て続けに重要な法改正・制度変更が行われ、「とりあえず放置」という選択肢が、以前よりはるかにリスクの高いものになっています。本記事では、今オーナー様が知っておくべき最新の制度と、取るべき行動をわかりやすく解説します。

1. 相続登記が義務化されました(2024年4月~)

まず押さえていただきたいのが、相続登記の義務化です。

2024年4月1日より、これまで任意だった不動産の相続登記が義務化されました。義務化後は、相続の開始を知った日から3年以内に登記申請を行う必要があり、違反すると10万円以下の過料が科される恐れがあります。

特に注意が必要なのは、過去の相続も対象になる点です。

2024年4月1日より前に発生した相続(例えば、10年前に亡くなった親名義のままの不動産)も、すべて相続登記の申請義務化の対象となります。具体的には、2027年3月31日までに相続登記の申請を行えば、義務を果たしたことになり、過料の対象にはなりません。

つまり、「昔相続したけれど名義変更していない」という方は、2027年3月末が期限となっています。残り約1年。今すぐ確認が必要です。

また、 2026年4月1日からは、結婚・転居等による氏名・住所変更登記も義務化されます(変更から2年以内、違反は5万円以下の過料)。 複数の義務化が重なっている状況です。

遺産分割の話し合いが長引いている方には、 「相続人申告登記」という制度が利用できます。これは、「私が相続人の一人です」と法務局に申し出ることで、ひとまず登記申請義務を果たしたとみなされる簡易的な手続きです。 まずはこちらを活用して義務を果たしておくことをお勧めします。


2. 空き家対策特措法の運用が2026年さらに強化

もう一つの大きな動きが、空家等対策特別措置法(空き家特措法)の運用強化です。

2026年3月現在、空き家対策特措法の運用はさらに厳格化されています。最も大きな変更点は、特定空家の認定基準が明確化され、自治体の判断がより迅速になったことです。従来は自治体ごとに判断基準にばらつきがありましたが、国土交通省が詳細なガイドラインを策定し、全国で統一的な運用が進められています。

「管理不全空家」という新しいカテゴリーに要注意

2023年12月の法改正で新設された「管理不全空家」という区分があります。

改正の大きなポイントが、特定空家となるおそれのある段階の空き家を指す「管理不全空家」というカテゴリーが新設されたことです。これまでは、すでに周囲への悪影響が発生している空き家のみを対象としていましたが、その前の段階にある空き家についても市町村が指導・勧告できるようになりました。

管理不全空き家は「特定空家」への移行前段階として位置づけられている点が重要です。つまり、早期に対応しなければ、より厳しい措置が取られる可能性があります。


3. 放置すると固定資産税が大幅に上がる可能性があります

「固定資産税が6倍になる」という話を耳にされた方も多いかもしれません。これは正確には少し異なりますので、正しく理解しておきましょう。

単に空き家だからといって固定資産税が上がることはなく、空家対策特措法により「管理不全空家」または「特定空家」に市町村から指定され、「勧告」措置を受けた場合にはじめて、固定資産税の住宅用地の特例が適用されなくなります。

具体的な金額感を見てみましょう。 勧告を受けた時点で住宅用地の固定資産税優遇措置が解除されます。例えば、評価額1000万円の土地の場合、優遇措置適用時の固定資産税は年間約2万3000円ですが、解除後は約14万円に跳ね上がります。年間で約12万円もの負担増となります。

指定されないようにするためには、定期的な管理が不可欠です。


4. 空き家を放置し続けるとどうなるか(段階的なリスク)

管理不全空家・特定空家の指定から行政代執行に至るまでのプロセスは以下の通りです。

段階内容
助言・指導自治体から改善通知が届く(強制力なし)
勧告固定資産税の住宅用地特例が解除される
命令50万円以下の過料の可能性
行政代執行自治体が強制的に解体し、費用を所有者に請求

今後も空き家に関する対策はさらに強化されていくことが予想されます。しばらく空き家のまま所有しなければならない場合は適切な管理を定期的に行い、使用する予定がない空き家の場合は早めに売却を決断するなど、空き家の出口戦略を真剣に考えるべき時代になったと言えるでしょう。


5. 空き家の「出口戦略」は主に3つ

空き家の活用方法として、主に次の3つの選択肢があります。

選択肢1|賃貸として活用する

空き家を賃貸物件として活用すれば、継続的な家賃収入が見込めます。人の出入りが生まれることで防犯面の不安も軽減され、建物の劣化スピードも落ちる傾向があります。リフォーム費用はかかりますが、自治体によっては改修費用の補助制度を設けているケースもあります。

選択肢2|売却する

建物の状態や立地によっては、売却が最もシンプルな選択肢です。 相続した空き家の場合、相続開始から3年以内に売却すれば、譲渡所得から最大3000万円を控除できる特例があります。この特例を活用すれば、税負担を大幅に軽減できます。ただし、適用には一定の要件があるため、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

選択肢3|空き家バンクに登録する

地域によっては、自治体が空き家バンク制度を運営しています。空き家バンクに登録すると、移住希望者や起業家とのマッチングが期待できます。2026年度現在、全国約1400の自治体が空き家バンクを運営しており、成約件数も年々増加傾向にあります。登録は無料の場合が多く、自治体によっては改修費用の補助制度も用意されています。


6. まず何から動けばいいか

「何から始めればいいかわからない」という方のために、行動の優先順位を整理します。

STEP 1|相続登記が完了しているか確認する
まず名義が自分(または相続人)に変わっているかを確認してください。未了の場合は、2027年3月末の期限に向けて早急に対応を。遺産分割が長引く場合は「相続人申告登記」で義務を果たすことができます。

STEP 2|物件の現状を把握する
現地を訪問し、建物の状態(雨漏り・傾き・害獣被害など)を確認してください。 遠方に住んでいるなど訪問が難しい場合は、管理代行サービスの利用も現実的な選択肢です。巡回点検や緊急時の対応を任せられるため、管理負担の軽減にもつながります。

STEP 3|活用・売却・管理のいずれかを判断する
賃貸活用・売却・継続管理の3つの選択肢を、建物の状態・立地・費用感をもとに検討してください。判断に迷う場合は、不動産会社・税理士・司法書士などの専門家への相談が近道です。


まとめ

相続した空き家の「とりあえず放置」は、2026年の今、かつてないほどリスクの高い選択肢になっています。相続登記の義務化・住所変更登記の義務化・空き家特措法の運用強化が重なり、行動を先送りにするほど負担が増す構造になっています。

まずは登記の状況確認と、物件の現状把握からはじめてみてください。当社では、相続した物件の賃貸活用・売却についてのご相談を承っております。お気軽にお声がけください。