入居者が孤独死したら残置物はどうなる?勝手に処分すると違法?賃貸オーナーが知っておくべき2025年最新ルール

入居者が孤独死したら残置物はどうなる?勝手に処分すると違法?賃貸オーナーが知っておくべき2025年最新ルール

「入居者が亡くなったらしいが、部屋に荷物が残ったままで何もできない」「相続人と連絡が取れず、早く次の入居者を募集したいのに…」こうした悩みを抱える賃貸オーナーは少なくありません。孤独死が発生したとき、室内に残された荷物(残置物)をオーナーが独断で処分すると、法的トラブルに発展するリスクがあります。本記事では、残置物の法的な扱いから費用の実態、そして2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法による最新ルールまで、賃貸オーナー向けにわかりやすく解説します。

賃貸の「残置物」とは?オーナーが直面するリスク

残置物が問題になるのはどんなとき?

「残置物」とは、賃貸借契約が終了したにもかかわらず、物件内に残されたままになっている家具・家電・衣類・日用品などの物品の総称です。引越し時の置き忘れだけでなく、入居者が突然亡くなった場合も同様の問題が発生します。

特に深刻なのが、一人暮らしの高齢者が孤独死した場合です。日本では少子高齢化が急速に進み、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2050年には一人暮らし世帯が全体の約44.3%に達する見込みとされています。孤独死のリスクは年々高まっており、賃貸オーナーにとってはもはや「他人ごと」ではない問題です。

残置物が放置されると、部屋の引き渡しや次の入居者募集が大幅に遅れ、その間も空室損失が発生し続けます。さらに、適切な手続きを踏まずに対応しようとすると、法的トラブルに発展することもあります。

残置物を勝手に処分すると違法になる理由

所有権は相続人に引き継がれる

入居者が亡くなった場合、その人が持っていた賃借権(部屋を借りる権利)と室内の残置物の所有権は、法律上、相続人に引き継がれます。つまり、賃貸借契約が自動的に終了するわけではなく、残置物の所有権もオーナーには移りません。

そのため、オーナーが独断で残置物を撤去・処分することは、相続人の財産に対する違法な行為となる可能性があります。「早く次の募集を始めたい」という気持ちは理解できますが、法的手続きを無視した対応はかえってオーナー自身のリスクを高めます。

注意!
相続人からの同意なく室内の荷物を処分した場合、損害賠償請求を受けるリスクがあります。「どうせ誰も来ない」と判断して処分することは絶対に避けてください。まずは相続人や保証人への連絡、そして管理会社への相談が先決です。

孤独死発生時の費用相場と負担者

残置物撤去・特殊清掃の費用はどれくらいかかる?

孤独死が発生した場合、室内の清掃や残置物の処理には相当の費用がかかります。日本少額短期保険協会の調査によると、孤独死があった部屋の原状回復(特殊清掃)費用の平均は約38万円、残置物処理費用の平均は約23万円とされており、合計で60万円以上になることも珍しくありません。遺体の発見が遅れ、夏場などに腐敗が進んだケースでは、床の下地まで交換が必要になるなど100万円を超える工事費用が発生することもあります。

費用は誰が負担するのか

残置物の撤去費用は、原則として相続人に請求できます。一方、原状回復費用(特殊清掃・リフォーム費用など)については、孤独死が「自然死」や「不慮の事故」による場合、賃借人側の故意・過失によるものとはみなされにくいため、オーナーが負担せざるを得ないケースが多いのが現状です。

費用の種類平均相場原則的な負担者
残置物撤去費用約23〜30万円相続人(請求可能)
特殊清掃・原状回復費用約38万円〜(重症例は100万円超)多くの場合オーナー負担
空室損失(手続き期間中)状況による実質的にオーナー負担

相続放棄された場合の最悪シナリオ

「相続財産清算人」と数十万円の予納金問題

孤独死が起きた場合、最も困るのが「相続人が全員、相続放棄をした」ケースです。この場合、残置物の所有権を引き取る人が誰もいなくなります。法律上は家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てる手続きが必要となりますが、この手続きには多大な時間と費用がかかります。

相続財産が不足すると見込まれる場合、申立人(この場合はオーナー)が「予納金」として数十万円を事前に支払わなければなりません。しかも、相続財産が乏しい状況での相続放棄であれば、この予納金がオーナーに戻ってくる可能性は低いといえます。相続人が見つからない、あるいは全員が相続放棄するという最悪のシナリオは、決して珍しくないのが現実です。

こうした事態を未然に防ぐためにも、入居時の契約段階から対策を講じておくことが重要です。そのための具体的な仕組みが、次に解説する国土交通省の「モデル契約条項」です。

2025年最新!国交省「残置物モデル契約条項」とは NEW

モデル契約条項の目的と3つの構成要素

国土交通省と法務省は2021年6月、単身高齢者が亡くなった際に賃貸借契約の解除と残置物の処理を円滑に行えるよう、「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しました。このモデル条項は、入居前に賃借人が第三者(受任者)に対して死後の事務処理を委任しておく、いわば「死後事務委任契約」の仕組みです。

モデル契約条項の3つの構成要素
  • ①解除関係事務委任契約:入居者の死亡時に、受任者が賃貸借契約を解除する手続きを代行できるようにする契約
  • ②残置物関係事務委託契約:入居者の死亡時に、残置物の整理・処分・指定先への送付などを受任者に委託する契約
  • ③賃貸借契約への特約条項:上記①②を前提に、賃貸借契約書に関連条項を盛り込む記載例

2025年10月施行の改正住宅セーフティネット法との関係

2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法では、居住支援法人の業務に「入居者からの委託に基づく残置物処理」が新たに追加されました。これにより、居住支援法人がモデル契約条項における「受任者」となることが正式に認められ、制度全体の実効性が大幅に高まっています。

また同時に、国土交通省はモデル契約条項の活用ガイドブック(第2版)を改定し、60歳未満の単身者であっても相続人が不明な場合などにはモデル条項を活用できるよう、運用の柔軟化も図られました。これはオーナーにとって、高齢者以外の単身入居者に対してもリスク対策の幅が広がることを意味します。

注意点:受任者をオーナー自身にすることはNG
モデル契約条項では、オーナーを受任者とすることは避けるべきとされています。オーナーの利益(早期空室解消)が優先され、賃借人・相続人の利益を害するおそれがあるためです。受任者には、居住支援法人や管理業者などの第三者を選ぶことが望ましいとされています。

残置物リスクを防ぐために今すぐできること

契約段階からの備えと管理会社への相談が最初の一歩

孤独死や残置物に関するリスクは、「起きてから対処する」ではなく、「起きる前に備える」ことが鉄則です。具体的には、①モデル契約条項を盛り込んだ契約書の整備、②家賃保証会社や少額短期保険(孤独死保険)への加入、③入居時の緊急連絡先・相続人情報の適切な管理、の3点が有効な対策として挙げられます。

しかし、これらを個人のオーナーが単独で実施するのは容易ではありません。モデル契約条項の活用には、受任者の選定・契約書の作成・死亡発生時の実務対応まで、専門的な知識と体制が必要です。信頼できる賃貸管理会社に委託することで、こうした対応を一貫してサポートしてもらうことができ、オーナーの手間と法的リスクを大幅に軽減できます。

「今の管理体制で本当に大丈夫か不安」「モデル契約条項を自分の物件にも導入したい」とお考えのオーナーは、ぜひ一度、専門の賃貸管理会社への相談をご検討ください。

センチュリー21 住宅流通センターでは、オーナー様の残置物リスク対策を含む賃貸管理を総合的にサポートしています。

「孤独死・残置物への備えをしたい」「管理内容を見直したい」など、お気軽にお問い合わせください。