家賃滞納が起きたら貸主はどうする?
督促から明け渡しまでの流れと注意点

「今月の家賃がまだ振り込まれていない。すぐに連絡してよいのか、どこまで強く言ってよいのか分からない」――賃貸経営をされている貸主様から、このようなご相談をいただくことがあります。
家賃滞納は、対応が遅れると未回収額が膨らむだけでなく、焦って強引な督促をしてしまうと、かえって貸主側が責任を問われるおそれもあります。
茅ヶ崎・寒川エリアでも、単身者向けアパートから戸建て賃貸まで、物件の種類を問わず起こりうるトラブルです。
本記事では、家賃滞納が発生した際の初期対応から、督促・契約解除・明け渡しまでの流れと、貸主様が注意すべき法的なポイントを解説します。

目次

  1. 家賃滞納が発生したときの初期対応
  2. 督促で貸主がやってはいけないこと
  3. 滞納が続いた場合の契約解除と明け渡しの流れ
  4. 家賃滞納を未然に防ぐための仕組みづくり
  5. 家賃滞納対応のポイントまとめ

家賃滞納が発生したときの初期対応

家賃滞納への対応は、最初の1〜2週間の動き方で、その後の回収のしやすさが大きく変わります。
まずは事実を確認し、早めに入居者と連絡を取ることが基本です。

まずは入金状況と契約内容を確認する

支払期日を過ぎても入金が確認できない場合、最初に行うべきは「本当に未入金なのか」の確認です。
振込名義の違いや、口座振替の残高不足、入金の反映遅れといった単純な行き違いであることも少なくありません。
あわせて、賃貸借契約書に記載された支払期日、遅延損害金の定め、連帯保証人や家賃保証会社の有無を確認しておきます。
家賃保証会社を利用している場合は、滞納の報告期限が定められていることが多いため、保証会社への連絡を先に済ませておくことが重要です。

電話・書面での連絡は早めに、丁寧に

未入金が確認できたら、できるだけ早く入居者本人に連絡します。
最初の連絡は、責める口調ではなく「お支払いの確認が取れていないようですが、ご状況はいかがでしょうか」といった確認の形をとると、入居者も事情を話しやすくなります。
電話がつながらない場合は、入金のお願いと支払期限を記載した書面を郵送するか、ポストに投函します。
一時的な収入減や入院など、やむを得ない事情がある場合は、分割払いの約束を書面で交わすことも選択肢のひとつです。

やり取りの記録を必ず残しておく

連絡した日時、方法、入居者の回答内容、支払いの約束の有無は、その都度記録に残しておきます。
送付した書面は控えを保管し、分割払いの合意をした場合は合意書として署名をもらっておくと安心です。
こうした記録は、滞納が長期化して契約解除や訴訟に進んだ場合に、貸主様が誠実に対応してきたことを示す重要な資料になります。

督促で貸主がやってはいけないこと

家賃を払ってもらえない状況が続くと、強い手段を取りたくなるお気持ちも分かります。
しかし、督促の方法を誤ると、貸主様が損害賠償を請求される側になってしまうことがあります。

無断での鍵交換や荷物の撤去は「自力救済」にあたる

滞納している入居者の部屋の鍵を勝手に交換する、室内に入って荷物を運び出す、玄関ドアにロックをかけて入れないようにする、といった行為は、法的な手続きによらずに自分で権利を実現しようとする「自力救済」にあたり、原則として認められていません。
たとえ家賃を滞納していても、入居者には部屋を使う権利があり、これを一方的に奪う行為は不法行為として損害賠償の対象となる可能性があります。
状況によっては住居侵入罪(刑法第130条)や器物損壊罪(刑法第261条)などの刑事責任が問題になることもあるため(出典:e-Gov法令検索「刑法」)、明け渡しは必ず法的な手続きを通じて進める必要があります。
入居者と連絡が取れなくなった場合の対応については、入居者が夜逃げ・無断退去した場合の対処法もあわせてご覧ください。

深夜の訪問や勤務先への連絡などの過度な督促

早朝や深夜の電話・訪問、繰り返しの長時間の督促、勤務先や近隣住民に滞納の事実を伝える、ドアに督促の張り紙をする、といった行為も避けるべきです。
社会通念上相当な範囲を超える督促は、入居者のプライバシーや平穏な生活を侵害するものとして、不法行為と判断されるおそれがあります。
督促はあくまで常識的な時間帯に、入居者本人と連帯保証人に対して行うことを心がけましょう。

家賃保証会社の「追い出し条項」を無効とした最高裁判決

家賃保証会社の契約条項をめぐっては、最高裁判所が令和4年12月12日の判決で、次の2つの条項が消費者契約法第10条に規定する「消費者の利益を一方的に害する条項」に当たると判断し、適格消費者団体による使用の差止め請求を認めました(出典:最高裁判所第一小法廷 令和4年12月12日判決〔令和3年(受)第987号〕、裁判所「裁判例検索」)。
1つは、滞納額が賃料3か月分以上に達したときに、保証会社が催告なしに賃貸借契約を解除できるとする条項です。
もう1つは、2か月以上の滞納があり、入居者と連絡が取れず、電気・ガス・水道の利用状況などから部屋を使っていないと認められる場合に、明け渡しがあったものとみなすことができるとする条項です。
この判決以降、保証会社であっても法的手続きを経ずに明け渡しを進めることは難しくなっています。
ご利用中の保証会社の契約内容に不安がある場合は、条項を一度確認しておくとよいでしょう。

滞納が続いた場合の契約解除と明け渡しの流れ

督促を続けても支払いがない場合は、契約解除と明け渡しに向けた手続きを検討します。
一般的な流れと、それぞれの段階で押さえておきたいポイントを整理します。

契約解除が認められる目安は「信頼関係の破壊」

民法第541条は、相手方が債務を履行しないときは、相当の期間を定めて催告し、その期間内に履行がなければ契約を解除できると定めています。ただし、不履行が「契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は解除できないとされています(出典:e-Gov法令検索「民法」第541条)。
さらに賃貸借契約では、最高裁判所が昭和39年7月28日の判決で、催告期間内に滞納分が支払われなかった場合でも、滞納額がわずかで、それまで18年間滞納がなかったなどの事情があるときは、解除は信義則に反し許されないと判断しています(出典:最高裁判所第三小法廷 昭和39年7月28日判決〔昭和37年(オ)第747号〕、裁判所「裁判例検索」)。
このように、賃貸借契約の解除には貸主と入居者の信頼関係が壊れたといえる事情が必要と考えられており、弁護士による解説などでは2〜3か月程度の滞納がひとつの目安とされることが多くあります。
ただし、滞納の期間や金額、これまでの支払い状況、督促への対応の誠実さなどを総合的に見て判断されるため、「何か月で必ず解除できる」という明確な基準はありません。

内容証明郵便による催告と契約解除の通知

契約解除に進む場合は、「〇日以内に滞納分を支払うこと、支払いがない場合は契約を解除する」という内容を記載した書面を、内容証明郵便(配達証明付き)で送るのが一般的です。
これは、前述の民法第541条の「相当の期間を定めて催告する」手続きにあたります。
内容証明郵便を使うことで、いつ、どのような内容の通知をしたのかを客観的に証明できます。
連帯保証人がいる場合は、保証人にも滞納の状況と支払いのお願いを通知しておきます。

明け渡し請求訴訟から強制執行まで

契約解除後も入居者が退去しない場合は、裁判所に建物明渡請求訴訟を起こし、判決を得たうえで強制執行を申し立てることになります。
訴訟の準備から強制執行の完了までには、ケースによって数か月から半年以上かかることもあり、弁護士費用や執行費用も発生します。
なお、滞納家賃の回収だけを求める場合は、簡易裁判所で訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払いを求める「少額訴訟」(民事訴訟法第368条)や、裁判所書記官が金銭の支払いを命じる「支払督促」(同法第382条)といった簡易な手続きを利用できることもあります(出典:e-Gov法令検索「民事訴訟法」)。
また、民法では、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないときは、債権は時効によって消滅すると定められているため(出典:e-Gov法令検索「民法」第166条第1項第1号)、滞納分を長期間放置しないことも大切です。

家賃滞納を未然に防ぐための仕組みづくり

家賃滞納は、起きてから対応するよりも、起きにくい仕組みをつくっておくほうが、貸主様の負担は大きく減ります。
入居前・入居中・管理体制の3つの視点で見直してみましょう。

入居審査と家賃保証会社の活用

入居審査では、収入に対する家賃の割合や勤務先、過去の賃貸契約の状況などを確認し、無理のない家賃設定かどうかを見極めることが大切です。
最近では、連帯保証人に代わって家賃保証会社の利用を入居条件とする物件が増えています。
なお、2020年4月1日に施行された民法改正により、個人が賃貸借契約の連帯保証人になる場合は、保証の上限額である「極度額」を定めなければ保証契約の効力が生じないこととされました(出典:e-Gov法令検索「民法」第465条の2、法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」)。
2020年4月以降に締結・更新した契約書に極度額の記載があるか、一度確認しておくと安心です。

口座振替など支払い方法の見直し

毎月入居者が自分で振り込む方法は、うっかり忘れによる滞納が起こりやすい傾向があります。
口座振替やクレジットカード払いなど、自動的に引き落とされる方法に切り替えることで、単純な払い忘れは大きく減らせます。
契約更新のタイミングは、支払い方法の変更をお願いするよい機会です。

地域に密着した管理会社による早期対応

家賃滞納は、支払期日の直後に気づいて連絡できるかどうかで、その後の展開が大きく変わります。
管理会社に委託している場合は、入金確認と督促を毎月決まったスケジュールで行い、必要に応じて保証会社や連帯保証人への連絡まで一貫して対応してもらえます。
茅ヶ崎・寒川のように物件と管理会社の距離が近いエリアでは、現地の様子を確認しながら入居者の状況を把握できることも、早期解決につながるポイントです。

家賃滞納対応のポイントまとめ

家賃滞納への対応は、「早く気づき、丁寧に連絡し、記録を残す」ことが基本です。
入金状況と契約内容を確認したうえで、入居者本人や保証会社・連帯保証人へ速やかに連絡し、やり取りの内容を記録しておきましょう。

一方で、無断での鍵交換や荷物の撤去、深夜の訪問や勤務先への連絡といった行き過ぎた督促は、貸主様が責任を問われる原因になります。
滞納が続く場合は、内容証明郵便による催告、契約解除、明け渡し請求訴訟といった法的な手続きに沿って進めることが大切です。

「滞納への対応に毎回時間を取られている」「どこまで督促してよいか分からない」とお考えの貸主様は、お気軽にご相談ください。
茅ヶ崎・寒川に根ざして45年以上の経験をもとに、入金管理から督促、保証会社との連携まで、貸主様の負担を減らす管理体制をご提案いたします。