賃貸経営の確定申告、年内にやっておきたい準備
青色申告の変更点と経費の整理

- 事業的規模の目安(5棟10室)と、青色申告特別控除の考え方
- 2026年分と2027年分で変わる控除額と、e-Taxの位置づけ
- 年内に整理したい収入と経費、迷いやすい項目
- 申告の期限と、青色申告の承認申請の期限
「毎年この時期になると、確定申告の準備で何から手をつければいいのか分からなくなる」――賃貸物件をお持ちの貸主様から、このようなお悩みをうかがうことがあります。
賃貸経営の確定申告は、年内に整理しておけることが意外と多く、年明けの作業がぐっと楽になります。
さらに、2027年分からは青色申告特別控除のルールが変わり、書面で申告している貸主様ほど影響を受けます。
本記事では、事業的規模の目安、控除の変更点、収入と経費の整理、申告までの流れを解説します。なお、個別の税額や判断は、税理士または税務署にご確認ください。
目次
貸主様の確定申告、まず押さえたい3つの数字
賃貸収入(不動産所得)は、1月1日から12月31日までの1年分を計算し、翌年に確定申告をします。2026年分の申告期間は、2027年2月16日から3月15日までです(所得税法120条)。まずは、押さえておきたい3つの数字を見ていきましょう。
(受付は2月16日から)
(戸建て5棟、または10室)
青色申告特別控除の上限
不動産所得があれば、青色申告は選べます
青色申告は、税務署の承認を受けて選べる申告方法で、不動産所得のある方も対象です(所得税法143条)。貸している戸数が少なくても申請できますが、受けられる「青色申告特別控除」の額は、貸付けが事業的規模かどうかで変わります。
実は、控除額を分けるのは「事業的規模」かどうか
国税庁は、事業として不動産を貸し付け、複式簿記で記帳している方について、一定の要件のもとで65万円などの青色申告特別控除を認めています。一方、事業的規模に満たない場合の控除は、10万円が上限です。
事業的規模かどうかの目安になるのが、所得税基本通達26-9の「5棟10室基準」です。戸建てなら5棟、アパートなどなら10室がおおむねの目安とされています。
目安に届かないときは、税理士か税務署に確認を
5棟10室は、あくまで形式的な目安です。例えば、戸建てとアパートの両方をお持ちの場合など、数え方に迷うケースもあります。目安に届かない場合の判断は個別の事情によるため、自己判断せず、税理士か税務署にご確認ください。
2026年分と2027年分で変わる青色申告特別控除
青色申告特別控除は、申告する年分によって使える条件が変わります。国税庁の案内では、2026年分(令和8年分)までと、2027年分(令和9年分)以降で、書面申告の扱いが大きく分かれています。
2026年分は、書面でも55万円。e-Taxなら65万円
2026年分の申告(2027年3月まで)は、書面で提出しても55万円の控除が使えます。e-Taxで提出すれば65万円です。2027年分以降は、次の表のように変わります。
| 2026年分 (2027年3月までに申告) | 2027年分 (2028年3月までに申告) | |
|---|---|---|
| 書面で申告する | 最大55万円 | 最大10万円 |
| e-Taxで申告する | 最大65万円 | 最大65万円 |
| e-Tax+優良な電子帳簿の保存など | 最大65万円 | 最大75万円 |
| 事業的規模に満たない場合 | 最大10万円 | 最大10万円 |
※事業的規模で、正規の簿記(複式簿記)により記帳している場合の控除額です。
実は、書面で控除を受けられるのは今回の申告まで
国税庁は、2027年分以降は、書面申告の場合の控除上限が10万円になると案内しています。65万円の控除を受けるには、複式簿記で記帳したうえで、確定申告書と青色申告決算書(貸借対照表を含む)のデータを、申告期限までにe-Taxで送信する必要があります。
例えば、毎年書面で提出してこられた貸主様は、書面のままだと控除が55万円から10万円に下がる計算になります。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、申告書と決算書のデータを作成して、そのままe-Taxで送信できます。
2027年分から、最大75万円の控除も
2027年分からは、65万円の要件に加えて、優良な電子帳簿の保存、またはデジタルシームレス保存の要件を満たすと、最大75万円の控除が受けられます。いずれも、届出書を申告期限までに税務署へ提出する必要があります。
見落としやすいのは、優良な電子帳簿は「課税期間の最初から」要件を満たして保存する必要があるという点です。2027年分で使いたい場合は、2027年1月からの帳簿づけに間に合うよう、年内に会計ソフトの対応状況を確認しておくと安心です。
年内に整理しておきたい収入と経費
不動産所得は「収入-必要経費」で計算します。対象は12月31日までの1年分ですので、年内に確認できるものは、今のうちに整理しておくと年明けの作業が軽くなります。
収入は、家賃だけではありません
不動産所得の収入には、家賃や駐車料のほか、礼金、更新料、返還を要しないこととされた敷金・保証金の一部なども含まれます。例えば、更新があった部屋の更新料や、家賃とは別に入金されている駐車場の収入が、集計から漏れていないかを確認します。
収入の一覧を確認するときは、レントロールの見方完全ガイドで紹介している項目を、そのまま使うこともできます。
経費にできるもの、ならないもの
賃貸経営の経費として確認したい主な項目は、次のとおりです。
- 賃貸している土地・建物の固定資産税、都市計画税などの税金
- 火災保険料・地震保険料(積立部分は除く)
- 修繕費
- 管理委託料などの管理にかかる費用
- 建物や設備の減価償却費
- 賃貸用の建物を取得するための借入金の利子
実は、貸主様ご自身の税金や保険料の多くは、経費になりません。所得税、住民税、国民健康保険税、国民年金保険料などは、必要経費に入らないとされています。借入金も、利子は経費ですが、元本の返済は経費になりません。
また、ご自宅と同じ建物の一部を貸している場合は、自宅部分にあたる費用を経費から除く必要があります。
修繕費か、資本的支出か迷う工事は
その年の経費として一度に落とせるのか、資本的支出として減価償却していくのかは、判断が分かれやすいところです。線引きの考え方は、減価償却で賢く節税で解説しています。大規模修繕の積立金の扱いが気になる方は、大規模修繕の積立金の経費算入もあわせてご確認ください。
年内に工事の請求書をそろえ、迷う工事を洗い出しておけば、税理士への相談もスムーズです。
- 年間の入出金がわかる収支報告(送付時期や書式は管理会社によって異なります)
- 固定資産税・火災保険料の支払いの記録
- 修繕の請求書と、工事の内容がわかる資料
管理会社に委託している場合は、上の3点を確認しておくと整理が進みます。当社では、月次レポートで毎月の収支をお知らせしています。
申告までの流れと、期限を逃さないための注意点
ここからは、今から申告までの流れと、期限で注意したい点を整理します。
e-Taxの準備
管理会社の報告をそろえる
(e-Taxでの送信がおすすめ)
青色申告がまだの方は、3月15日までに承認申請を
青色申告をするには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出して、承認を受ける必要があります。提出の期限は、青色申告をしようとする年の3月15日までです(所得税法144条)。新たに不動産の貸付けを始めた場合や、相続で引き継いだ場合は、期限が異なります。
例えば、まだ承認を受けていない貸主様が2027年分から青色申告にするなら、2027年3月15日までに提出します。実は、2026年分の申告期限と同じ3月15日です。申告の準備と一緒に、忘れずに済ませておきたいところです。
迷ったときの相談先
事業的規模の判定や経費の可否は、個別の事情で結論が変わることがあります。申告書の作成は税理士にご依頼いただくか、国税庁の確定申告書等作成コーナーをご利用ください。
当社でも、司法書士・税理士などの専門家と連携しています。賃貸経営のご相談の中で、必要に応じてご案内することができます。
まとめ
賃貸経営の確定申告は、年内の整理と、2027年分に向けた準備がポイントです。事業的規模の目安は5棟10室で、控除額はそこで大きく変わります。2027年分からは書面申告の控除上限が10万円になるため、65万円以上の控除を目指す貸主様は、e-Taxと帳簿の準備を早めに始めておくと安心です。
年内にやっておきたいことを、チェックリストにまとめました。
- 2026年の収入(家賃・礼金・更新料・駐車場)を一覧で確認した
- 経費の領収書・請求書・支払いの記録をそろえた
- 修繕費か資本的支出か迷う工事を洗い出した
- e-Taxを使う準備を始めた
- 2027年分から青色申告にする場合の、承認申請の期限(3月15日)を確認した
- 優良な電子帳簿を使う場合、2027年1月からの帳簿づけに間に合うかを確認した
